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Dr's コラム第4回 「私の治療法」を決めるために重要なこと

独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター
臨床研究センター長
永井 宏和(ながい ひろかず)先生
独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター
外来化学療法室/がん化学療法看護認定看護師
吉田 美紀(よしだ みき)先生
独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター
長期フォローアップ外来
豊田 菜月(とよだ なつき)先生

リンパ腫にはたくさんの種類があり、治療方針は病気や患者さんの特性、要望などを考慮して決められるため、患者さんごとにより良い治療法が異なります。では、いくつかの選択肢の中から自分にふさわしい治療法を選ぶ場合、考慮すべきポイントは何でしょうか。今回は、独立行政法人国立病院機構名古屋医療センターの先生方に、治療法を決める、あるいは納得して治療を始めるために重要なことについて、医師、看護師のお立場からお話をうかがいました。

最初に、リンパ腫での治療法の説明についてお伺いします。患者さんにはどのような点を考慮してお話されているのでしょうか。

永井先生(以下、敬称略) リンパ腫は100くらい診断名があるので、まずどのようなタイプかを考慮して、標準治療が確立しているタイプでは標準治療を説明します。標準治療が確立していないタイプや、標準治療はあっても病歴や体力、副作用などのいろいろな理由で標準治療が行えない場合は、標準治療をベースに今のエビデンスの中で最も良いと思われる複数の治療法をお話し、患者さんと相談しながら決めていきます。

患者さんと相談しながら治療法を決めるというところを具体的にお教えください。

永井 例えば、脱毛など特定の副作用を許容できるかどうか。効果が高いけれど副作用も強く出てしまう治療と、効果はそれほど強くないけれど副作用も穏やかな治療のどちらにするか。3 週に 1 回外来通院する治療法と毎週通院する治療法の効果がほぼ同じ場合にどちらを選ぶか、などについて話し合います。「先生にお任せします」という患者さんもいますが、できるだけ納得して治療を受けていただきたいので、要望に沿うように調整しながら最終的にはご自身で決めていただくようにしています。

いろいろな選択肢があるわけですね。その中から治療法を決める、あるいは納得して治療を開始するためのポイントは何でしょうか。

永井 「こういう治療法や選択肢があります」とお話ししても、「すぐには決められない」という方は多いです。おそらく、選択した治療法を受けてどういう状態になりたいのか、何を治療の目標やゴールとしたら良いのかを考えにくいことが理由のひとつだと思います。
治療の目標やゴールは、リンパ腫の症状が抑えられることはもちろんですが、それ以外のこと、例えば「子供や孫の入学式、卒業式までには退院したい」とか「孫が生まれるまでには治療を終えたい」といったようなことを目標にしても良いと思います。そうすると「こういう風にしたい」「こういうことは避けたい」という要望を医師に伝えることができますし、「いついつまでは頑張ろう」と前向きに治療に取り組むこともできます。ですので、まずは何か具体的な目標やゴールを決めると良いと思います。ただ、医師にはなかなか言い出せないかもしれませんので、そういう時は是非、看護師や他のスタッフに伝えていただければと思います。

治療の目標がすぐに思い浮かばない場合、何か良い方法はありますか?

豊田先生(以下、敬称略) そういうときは、「治療中や治療後にどういう生活を送りたいか」を考えると良いと思います。今までどのような暮らしをしてきたかという「生活史」を振り返ってみて、例えば旅行が好きでよく皆で出かけていた、最近はあまり行っていなかった、という場合は「来年の春に家族や友人と旅行に行く」といったことを目標に選んではいかがでしょうか。

吉田先生(以下、敬称略) 別の言い方をすると、自分自身が何を大切にしているか、どういうライフスタイルを望んでいるかを考えるということですね。例えば「仕事に差し障りがあるので脱毛はどうしても避けたい」「育児や介護に影響がでないようにしたい」「仕事への影響が少ない通院スケジュールを組みたい」「遠方から通うのが辛いので少しでも楽なスケジュールの方が良い」といったことです。最適な治療法というのは患者さんごとに異なるので、治療中や治療後に許容できること、できないことを具体的に伝えていただければ、われわれスタッフからもアドバイスができるようになります。治療が長くなればなるほど、患者さんとのコミュニケーションも増えて、一緒に目標を見つけるようなこともあります。

豊田 ライフスタイルを考えるときに覚えておいていただきたいのは、趣味をあきらめたり、我慢することはないということです。治療中はどうしても禁止事項が多くなりがちですが、何もかもが出来ないというわけではありません。禁止することで目標や楽しみが失われてしまうよりも、発散して治療を続けていただくことのほうが大事なのです。ただし、外出の際には「マスクをする」「手洗いやうがいをする」など感染症の予防策を徹底していただいたり、病院の連絡先を把握していただくようお願いしています。
また、仕事をあきらめる必要もありません。今は治療を続けながら働いている方もいますし、就労についての相談を受け付けている相談支援センターもあります。ですので、「趣味や仕事を続けることができる」といった点も、治療法を決める判断基準のひとつになるのではないかと思います。

治療の目標やライフスタイルを決めた後、次に大切なことは何でしょうか。

永井 納得した状態で治療を開始できるように、疑問や不安、問題となる点がないかを整理することでしょう。例えばがんという病気自体を受け入れられないのか、抗がん剤治療の内容に疑問があるのか、あるいは体力的に治療が続かないのではという不安なのか、といったことですね。

豊田 インフォームドコンセントを受けた直後は、患者さんご本人もご家族も理解が追い付いていない状態なので、整理するといってもすぐには出来ないかもしれません。説明を聞いてわかったような気持ちでいても、把握している内容がご家族の中でも違っていたということも多いことでしょう。そこでまずは、これから受ける治療法についてご自身の言葉で説明できるかどうか考えてみると良いと思います。
また、入院中は看護師が近くにいますので、先生の説明の後に分からなかった場合は遠慮なく相談してみてください。

吉田 説明内容をご家族などと確認しあうのも良いでしょう。そうすることで、例えば「吐き気が起きるという説明があったのでは?」と思い出し、「吐き気はいつ出るのだろう?」「通院の後、外出や通勤は問題ない?」などと疑問点がまとまったら、次の診察などで質問してみる。これを繰り返すと良いのではないでしょうか。

外来化学療法室の見学

当院では最初に入院治療、その後に外来での治療を行うことが多いのですが、退院直前に外来化学療法室の見学を行っています。患者さんご本人だけではなくご家族も一緒にご案内し、「採血はこちらで行います」「治療を受けるベッドはこちらです」というように説明しています。外来通院の具体的なイメージをつかむヒントになることもあるのでないかと思います。機会があれば、採血や点滴を受ける場所について、スタッフに質問してみると良いかもしれません。

治療法を決めるために重要なポイント 治療の目標、ゴールを決める 例)孫の卒業式までに治療を終える 治療中や治療後にどういう生活を送りたいかを考える 例)仕事への影響が少ない通院スケジュールを組みたい、治療中も趣味を続けたい 納得して治療を続けるために、疑問や不安、問題点を整理する 例)吐き気はいつ出る?通院の後、外出や通勤は問題ない?
高額療養費制度を知っていますか? 高額療養費制度に関するQ&A 詳しく読む 高額療養費制度に関する「よくあるご質問」をQ&A形式で分かりやすく解説しています。

ご家族のかたへ

ご家族のかたへ

監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院
名誉院長/臨床研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生

大切な人がリンパ腫と診断されたら、ご本人だけでなく、ご家族のかたにも大きな影響を与えます。悲しみや不安を抱えるなか、さまざまな決断をしたり、初めて経験する多くの変化に対処していかなければなりません。今後の療養生活や、ご本人を支えていくうえで重要なポイントを知っておきましょう。