FLの症状や病期
監修:
独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター 副院長
永井 宏和(ながい ひろかず)先生
リンパ節の腫れや全身症状(B症状)などがみられます
FLでは、病気の進み具合やがん細胞が増えている場所によって、さまざまな症状がみられます。
がん細胞が増えている場所によってみられる症状
リンパ節の腫れ
首や足のつけ根、わきの下などが腫れます。
皮膚の症状
かゆみや発疹など、皮膚の症状がみられる場合があります。
その他の内臓の一部の
腫れ・圧迫
頭痛・けいれん、吐き気・嘔吐など、部位に応じてさまざまな症状があらわれます。
神田善伸 監:ウルトラ図解 血液がん, 法研, p58-60, 2020より参考
また、B症状と呼ばれる以下の3つの全身症状が発現する場合があります。
B症状
原因不明の体重減少
きちんと食事をとっているのに、体重の減少がみられる場合があります。
原因不明の高熱
原因がみあたらないのに、38℃以上の高熱が続くことがあります。
激しい寝汗
(盗汗(とうかん))
就寝中に大量の寝汗が出て、寝間着を着替えなければならないほどひどい場合もあります。
Carbone PP, et al.: Cancer Res. 31: 1860-1861, 1971
FLが原因で他の病気(合併症(がっぺいしょう))が起こることもあります。
正常なB細胞のはたらきが低下すると感染症にかかりやすくなります。通常は感染症の原因とならないような細菌やウイルスでも感染症が引き起こされることがあります。このような感染症を日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)といいます。
骨髄で異常なB細胞が増殖すると、赤血球や血小板といった血球の産生も妨げられます。それにより疲労感や出血傾向なども起こることがあります。
FLが原因で起こる合併症
感染症
正常なリンパ球のはたらきが低下すると、感染症にかかりやすくなります。またかかると、治りにくい場合があります。
出血傾向
骨髄で異常なB細胞が増えると血小板が正常につくられなくなり、血が止まりにくくなるため、あざができたり鼻血が出やすくなることがあります。
日本癌治療学会 編:濾胞性リンパ腫:患者さんの手引き
ESMO治療ガイドラインに基づいた患者さん向け情報 p10, 2016
FLは病気の進み具合により限局期と
進行期に分けられます
FLがどの程度進行しているか(進行度)は、病期(びょうき)(ステージ)であらわされます。FLの病期は、Ann Arbor(アン・アーバー)分類により4つに分類されます。
| 病期 | 症状 |
| Ⅰ期 | 1ヵ所(1領域)のリンパ節または単一のリンパ節外臓器の腫れがある状態 |
| Ⅱ期 | 横隔膜より上もしくは下のどちらか一方に、2ヵ所以上のリンパ節やリンパ系組織の腫れがある状態 |
| Ⅲ期 | 横隔膜より上と下の両方に、リンパ節やリンパ系組織の腫れがある状態 |
| Ⅳ期 | リンパ節以外の臓器にリンパ腫が広がっている状態 |
Carbone PP et al.: Cancer Res. 31: 1860-1861, 1971より作成
病期Ⅰ・Ⅱのようにリンパ腫の広がりが限定的な場合を限局期といい、より広範囲にリンパ腫が広がった病期Ⅲ・Ⅳを進行期といいます。FLは進行が遅く、進行期になって診断される患者さんが3分の2以上を占めます。
日本血液学会 編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 悪性リンパ腫総論」
日本血液学会 編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 1濾胞性リンパ腫」
もっと知りたい方へ〜悪性度と進行度の違いは?〜
悪性度とは、いろいろな病気のなかで、どの病気が進行しやすいかをみたものです。病気の悪性度は進行の速さをあらわしており、進行が速いタイプを高悪性度、進行が遅いタイプを低悪性度といいます。
一方、進行度は病気の広がりをみています。進行度は病気の広がり具合によりⅠからⅣ期まで、4段階に分類されます。
FLはリンパ腫のなかでも年単位でゆっくりと進行する低悪性度のリンパ腫に分類されます。一方、病期であらわされる進行度は患者さんごとに異なります。
FLはまれに進行が速い別のタイプのリンパ腫に
変わることがあります
FL はリンパ腫のなかでも年単位でゆっくりと進行する低悪性度のリンパ腫に分類されますが、まれに進行が速い別のタイプのリンパ腫に変わることがあり、注意が必要です。FL病変の一部から、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL(ディーエルビーシーエル))などの悪性度の高い病気が生じることがあるのです。
このような変化は形質転換と呼ばれ、FL患者さんでは年間2%の割合で起こるといわれています。形質転換しているかどうかは症状だけでは気づきにくく、例えばFLが治療後に再発した時などには、リンパ腫を採取する生検(せいけん)を行い、検査により細胞の“顔つき※の変化”を確認することが勧められています。形質転換すると、治療方針の変更が検討されることもあります。
※がんの組織の見え方やDLBCLに特徴的なタンパク質など
日本血液学会 編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 1濾胞性リンパ腫」
日本癌治療学会 編:濾胞性リンパ腫:患者さんの手引き
ESMO治療ガイドラインに基づいた患者さん向け情報 p25, 2016