PTCLとは
監修:
島根大学医学部 内科学講座 血液・腫瘍内科学 教授
鈴木 律朗(すずき りつろう)先生
PTCLは血液細胞であるT細胞のがんです
異物から体を守る免疫(めんえき)
T細胞を含む白血球は、主に免疫の機能を担っています。免疫とは、体の中に細菌やウイルスなどの異物が入ったときに「異物だ」ということを認識して攻撃し、体を守るしくみです。免疫力が低下すると、いろいろな感染症にかかりやすくなります。
PTCLは成熟したT細胞のがん
(イメージ図)
鈴木隆二:カラー図解 免疫学の基本がわかる事典, 西東社, p38-39, 2015より作成
がん化したT細胞は異常に増殖し
本来の機能を果たさなくなります
T細胞ががん化すると、何が起こるのでしょうか。
T細胞は毎日つくられていますが、その数が一定の範囲内になるように調節されています。しかし、がん化した細胞は異常に増殖するようになり、本来のT細胞の機能を果たさなくなってしまいます。
そのため、がん細胞のかたまりができ、リンパ節などの腫(は)れ(しこり)が生じたり、正常なT細胞が担っている免疫機能に異常が起きたりします。また、がん細胞が放出する物質の影響や増えたがん細胞に臓器が圧迫されることなどにより、発熱などの全身の症状が起こることがあります。
(イメージ図)
日本造血細胞移植学会 編:造血細胞移植ガイドライン 悪性リンパ腫(成人) 第3版, p28, 2019
神田善伸 監:ウルトラ図解 血液がん, 法研, p20, p30, 2020
がん細胞は身体のさまざまな部位で
発生して広がります
リンパ節の腫れや全身症状(B症状)などが
みられます
PTCLでは、病気のタイプやがん細胞が増えている場所によって、さまざまな症状がみられます。
がん細胞が増えている場所によってみられる症状
リンパ節の腫れ
首や足のつけ根、わきの下などが腫れます。
皮膚の症状
かゆみや発疹など、皮膚の症状がみられる場合があります。
肝臓、脾臓の腫れ
(肝腫大、脾腫大)
お腹や背中に圧迫感や痛みを感じることがあります。触診で肝臓/脾臓の腫れがわかる場合もあります。
その他の内臓の一部の
腫れ・圧迫
頭痛・けいれん、吐き気・嘔吐など、部位に応じてさまざまな症状があらわれます。
神田善伸 監:ウルトラ図解 血液がん, 法研, p58-60, 2020より参考
また、B症状と呼ばれる以下の3つの全身症状が発現する場合があります。
B症状
原因不明の体重減少
きちんと食事をとっているのに、体重の減少がみられる場合があります。
原因不明の高熱
原因がみあたらないのに、38℃以上の高熱が続くことがあります。
激しい寝汗
(盗汗(とうかん))
就寝中に大量の寝汗が出て、寝間着を着替えなければならないほどひどい場合もあります。
PTCLが原因で他の病気(合併症(がっぺいしょう))が起こることもあります。例えば、正常なT細胞のはたらきが低下すると、通常は感染症の原因とならないような細菌・ウイルスでも感染症が引き起こされることがあり、そのような感染症を日和見感染症 (ひよりみかんせんしょう)といいます。また、PTCLのタイプによっては、薬剤アレルギーを合併しやすいといわれています。合併症の徴候がみられた場合は、PTCLそのものの治療に加えて、合併症の治療を行います。
PTCLが原因で起こる合併症
感染症
正常なリンパ球のはたらきが低下すると、感染症にかかりやすくなります。
PTCLには多くの種類があり主なものは4種類です
ひと言でPTCLといっても、実は約30もの種類があり、がん細胞の大きさや形、細胞表面にあるタンパク質が違ったり、異なる症状があらわれたりします。ここでは、以下の4つの主な病型を挙げます。
ALK陽性未分化大細胞リンパ腫
(アルクようせいみぶんかだいさいぼうりんぱしゅ)
(ALK陽性 ALCL)
(アルク陽性エーエルシーエル)
標準治療があり、PTCLの中でも比較的予後が良好
ALK融合遺伝子の検査で陽性
リンパ節の腫れや発熱がみられるが、リンパ節以外からも発生する
若年男性に多く、患者さんの半数は34歳以下とされる1)
ALK陰性未分化大細胞リンパ腫
(アルクいんせいみぶんかだいさいぼうりんぱしゅ)
(ALK陰性 ALCL)
(アルク陰性エーエルシーエル)
ALK陽性ALCLとがん細胞の形態は同様だが、ALK融合遺伝子の検査で陰性
リンパ節の腫れや発熱などの全身症状がみられ、リンパ節以外からも発生する
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫
(けっかんめんえきがきゅうせいティーさいぼうりんぱしゅ)
(AITL)
(エーアイティーエル)
ほとんどの患者さんで全身のリンパ節の腫れがみられるほか、さまざまな症状があらわれることがある(肝臓・脾臓の腫れ、皮疹、発熱など)
日和見感染症の合併が多い
高齢の方に発症するタイプで、患者さんの半数は65歳以上とされる1)
AL末梢性T細胞リンパ腫,
非特定型
(PTCL-NOS)
(ピーティーシーエルノス)
PTCLのうち、ほかのいずれのタイプにも分類されない病気の集合であるため、がん細胞の形や性質もさまざま
他のPTCLの可能性を否定することで診断される
リンパ節の腫れや発熱などの全身症状がみられる
日本血液学会 編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 7末梢性T細胞リンパ腫」
1) International T-Cell Lymphoma Project: J Clin Oncol. 26: 4124-4130,2008
もっと知りたい方へ〜PTCL患者さんは何人くらい?〜
PTCLは、日本では年間約2,000人が新たに発症すると推定されている(令和2年患者調査結果, 厚生労働省)、比較的まれな疾患です。2)一般的には高齢者に多いことから、近年の高齢化により、今後、増加することが予想されます。世界的には、PTCLの中では、PTCL-NOSが約25%、AITLが約20%と多く、ALK陰性ALCLが6%、ALK陽性ALCLが5%を占めるとされています。
日本血液学会 編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 7末梢性T細胞リンパ腫」
2)厚生労働省:令和2年 (2020)患者調査の概況
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/index.html)
[2023年9月閲覧]