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MZLの治療(抗がん剤・放射線・移植)

監修:
愛知県がんセンター 病院長

山本 一仁(やまもと かずひと)先生

辺縁帯リンパ腫では薬物治療や放射線治療、
その他がんの種類に合わせた治療を行います

辺縁帯リンパ腫には薬物治療、放射線療法などの治療法があります。その他、細菌やウイルス感染が関連する一部のリンパ腫ではそれらの除菌治療や、感染による炎症に対する治療を優先して行うことがあります。

薬物療法

複数の抗がん剤やモノクローナル抗体製剤と組み合わせて治療を行います。

治療の画像1

放射線療法

体の外側からがんがある部位に放射線を当て、がん細胞を破壊する治療法です。

治療の画像2

その他

胃MALTリンパ腫においてピロリ菌の除菌を行うことがあります。
また、外科切除も考慮されることがあります。脾辺縁帯リンパ腫では脾臓を摘出したり、C型肝炎の治療を行うことがあります。

日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 2. 辺縁帯リンパ腫」

辺縁帯リンパ腫の薬物治療は、抗がん剤や分子標的薬、免疫調節薬などを中心に行います

辺縁帯リンパ腫の薬物治療は、複数の抗がん剤や分子標的薬免疫調節薬などが中心になります。多くの場合、治療は通院で行います。また、一定の間隔で繰り返し行うため、通常数ヵ月かかります。

薬物療法の副作用

薬剤の種類によってさまざまな副作用がみられることがあります。薬剤を使用する際には、主治医や薬剤師に、薬剤の効果や副作用についてよく説明を受け、副作用のような症状がみられた場合には、受診して主治医に相談するようにしましょう。また、飲み薬の場合には、決められた量を決められた回数、忘れずに服用するようにしましょう。

化学療法

たくさんの種類があり、悪性リンパ腫の病型によって通常4〜5種類の抗がん剤を組み合わせる多剤併用化学療法が行われます。

モノクローナル抗体製剤

モノクローナル抗体製剤はがん細胞の表面にあるタンパク質や遺伝子をターゲットとした薬剤です。標的となるがん細胞にくっつき、体内の「免疫」を担う細胞が攻撃をしやすくします。従来の抗がん剤と組み合わせて投与することもあります。

免疫調節薬

体内の免疫を高めることでがん細胞を攻撃することを目的とした薬剤です。薬物療法や放射線療法が受けられない場合や再発した場合には、モノクローナル抗体製剤と組み合わせて投与することがあります。

治療の画像3

日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 2. 辺縁帯リンパ腫」

放射線療法では、放射線を用いてがん細胞を破壊します

放射線療法は、体の外側からがんがある部位に放射線を当て、がん細胞を破壊する治療法です。悪性リンパ腫では早期で、がん(リンパ腫細胞)が1ヵ所に集まっている場合(限局期)に効果が高いとされています。
放射線を当てる量や回数は病気の状態によって異なりますが、外来で治療可能な場合が多く、1ヵ月程度の通院となります。

神田善伸 監:ウルトラ図解 血液がん, 法研, p126, 2020

放射線療法の副作用

放射線療法の影響により、疲労感や皮膚の症状などがあらわれる場合があります。

治療の画像4

飛内賢正 監:血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫, 講談社, p34, 2015 より作成

薬物療法や放射線治療で効果がみられない場合など
は、造血幹細胞移植を考慮します

造血幹細胞移植は、抗がん剤や放射線療法によってリンパ腫細胞を含めた体内の血球細胞を取り除き、血球のもととなる造血幹細胞を直接患者さんの体内に投与する治療法です。造血幹細胞移植には自分の造血幹細胞を使用する自家造血幹細胞移植と、他の人の造血幹細胞を使用する同種造血幹細胞移植があります。
辺縁帯リンパ腫では、最初の治療で造血幹細胞移植を用いることはほとんどありません。他の治療をしても効果が十分ではなく、再発を繰り返す場合などには移植を検討します。その場合、移植は身体への負担が大きいので、患者さんの全身状態などを考慮して行うかどうかを決めます。
自家造血幹細胞移植の治療期間は、前処置の方法や移植後の患者さんの状態などによって異なります。血液中から造血幹細胞を採取するのに採取準備を含めて1週間程度かかります。移植の1週間ほど前から前処置を開始し、移植後は生着まで約2週間、退院するまで約1ヵ月程度かかる場合が多いでしょう。1)

1)永井正 著:図解でわかる 白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫, 法研, p42-43, p172, 2016

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チーム医療のための血液がんの標準的化学療法(直江 知樹, 堀部 敬三 監), メディカル・サイエンス・インターナシ ョナル, 2013 を参考に作成

移植の副作用

自家造血幹細胞移植では、前処置によって吐き気や脱毛などの副作用が生じる場合があります。また、骨髄抑制により白血球が減少し、感染症にかかりやすくなり、さらには重症化する可能性があります。このため、しっかりとした感染予防が必要で、患者さんは移植から生着まで無菌室で過ごします。

日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 5.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版,2023
「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 2. 辺縁帯リンパ腫」
飛内賢正 監:血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫, 講談社, p45, 2015