日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版 Web版,
2020「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 5. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」
[2021年8月閲覧]
初回治療がうまくいかない場合や再発した場合
再発とは、治療によりがんがほぼ消えたり小さくなったりした後に、再び活動性が生じることです。初回治療で効果が得られなかったり再発した場合は、自家造血幹細胞移植(後述)と大量化学療法の併用が考慮されます。
自家造血幹細胞移植と大量化学療法の併用が実施できる患者さんでは、化学療法でがん細胞を減らした後に移植を行います。
自家造血幹細胞移植と大量化学療法の併用は身体への負担もある治療法なので、実施が難しい場合は救援化学療法のみを行います。放射線治療が選択される場合もあります。
救援化学療法として使用する薬は複数あり、どの薬を使用するのが良いかは病状により異なります。さまざまな化学療法があり、患者さんの状態などを考慮して決められます。
DLBCLに対する治療は盛んに研究が行われており、臨床試験に参加するのも選択肢のひとつです。
日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版 Web版,
2020「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 5. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」より参考・参照
[2021年8月閲覧]
神田善伸 監:ウルトラ図解 血液がん, 法研, p84, 2020
①DLBCLで行われる抗がん剤治療
DLBCLでは、R-CHOP療法が行われます。R-CHOP療法は、分子標的薬という新しいタイプの薬を用いた薬物療法です。分子標的薬とは、がん細胞がもつ特定のタンパク質を狙い撃ちにするお薬です。分子標的薬の登場により、DLBCLは予後が改善しています。
R-CHOP療法では、分子標的薬のほか、アルキル化剤やステロイド薬など4種類の抗がん剤を組み合わせて治療を行います。
高齢の患者さんや、もともと健康状態がよくない患者さんで、副作用が出やすく、治療に耐えられないと考えられる場合は、薬の量を減らしたり副作用が少ない薬を使用したりします。
日本血液学会 編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版 Web版,
2020「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 5 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」
[2021年8月閲覧]
神田善伸 監:ウルトラ図解 血液がん, 法研, p122, 2020
飛内賢正 監:血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫, 講談社, p37, p54, 2015
R-CHOP 療法の主な副作用
R-CHOP 療法では副作用があらわれることがあります。
抗がん剤治療はがん細胞を減らすために実施しますが、正常な血液細胞も一時的に減少します。このような副作用を骨髄抑制といいます。骨髄抑制が生じると、白血球の減少で感染症にかかりやすくなったり、血小板の減少で出血しやすくなります。
副作用が発現するかどうか、またその強さやあらわれる時期は患者さんによって異なります。抗がん剤治療を行う際には、副作用に対する予防や治療を並行して行います。
②放射線治療
放射線治療は、身体の外からがんがある部位に放射線をあて、DNAを傷つけることによりがん細胞を破壊する治療法です。がんの広がりが限定されている場合に効果的です。
初発で大きな病変がない限局期DLBCLでは、抗がん剤治療の後に病変部位への放射線治療を行うことがあります。
飛内賢正 監:血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫, 講談社 , p34, 2015より作図
放射線照射の頻度や回数は病気の状態によって異なりますが、外来での治療が可能で4〜5週間程度通院します。副作用としては、疲労感や皮膚の症状などがあらわれる場合があります。
日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版 Web版,
2020「第Ⅱ章リンパ腫 Ⅱリンパ腫 5. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」
[2021年8月閲覧]
飛内賢正 監:血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫, 講談社, p35, 2015
私の受けている治療は標準治療と違います。なぜでしょうか?
DLBCLは、いわゆる標準治療が推奨されています。標準治療とは、「科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療」です※。
※国立がん研究センター がん情報サービス:
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/
hyojunchiryo.html
“科学的根拠に基づく”治療とは、年齢や身体の状態などが一定の条件に当てはまる患者さんを対象に臨床試験と呼ばれる研究を行い、治療法を比較するなどして、多くの患者さんでより良い効果が得られたものです。
最良の治療であれば、誰しもその治療を受けたいと思いますが、標準治療が全ての患者さんに適しているとは限りません。
一方、実際には、病気の状態や身体の状態、さらには入院できるかどうかといった生活状況は患者さんによって異なります。そのため、主治医はそれぞれの患者さんごとに最適な治療法を考えます。ですから標準治療とは違う治療が行われる場合もあるのです。
また、標準治療は必ずしも新しい薬剤や最先端の治療法であるとは限りません。最新の治療は、まだ十分に科学的な根拠があるとは言えない場合もあるためです。研究が進み、新しい治療が十分に確立すれば、「標準治療」は変わることがあります。
自分の受ける治療が他の人と違うと、心配に思うこともあるかもしれません。治療に関して不安や疑問があるときは、遠慮せず主治医に聞いてみましょう。
名古屋大学医学部附属病院
血液内科 講師
島田 和之先生