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検査・診断・治療ATLLとは

監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院 名誉院長/臨床研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生

ATLLはウイルスへの感染で起こる血液のがんです

ATLLは、血液細胞の一種である T 細胞が、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型)というウイルスに感染したことが原因でがんになる疾患です。ATLLとはどのような病気かを調べる前に、血液細胞について知っておくと、ATLL のことを理解しやすくなります。

T細胞とは

T細胞は、血液の白血球の一種です。血液は血球と呼ばれる細胞と液体成分(血漿けっしょう)からなっており、血球には、赤血球、白血球、血小板の3種類があります。白血球にはさらにいくつかの種類があり、T細胞は白血球のうちのリンパ球のひとつなのです。

異物から体を守る免疫めんえき

T細胞を含む白血球は、主に免疫の機能を担っています。免疫とは、体の中に細菌やウイルスなどの異物が入ったときに「異物だ」ということを認識して攻撃し、体を守るしくみです。免疫力が低下すると、いろいろな感染症にかかりやすくなります。

HTLV-1は主に3つの経路で感染します

HTLV-1の感染経路

ATLLの原因であるHTLV-1の感染経路として、主に以下の3つがあげられます。ただし、以下の行為を行うと必ず感染するわけではありません。

母子感染

主に母乳を介して感染します。現在は、妊婦健診にHTLV-1に感染しているかどうかを調べる検査が組み込まれ、母子感染予防対策が行われています。

母子感染
性交渉による感染

主に男性から女性に感染する場合が多いといわれますが、女性から男性に感染する場合もあります。

性交渉による感染
輸血による感染

1986年以降は、献血時にHTLV-1感染の有無を調べる検査が行われるようになったため、現在では輸血による新たな感染はほぼありません。

輸血による感染

周りの人への感染を防ぐための注意点

感染を予防するために、日常生活では以下の点に注意が必要です。

授乳の注意点

母乳を介した感染を避けるために最も感染率の低い方法は、完全人工栄養です。そのほかに、短期母乳栄養や凍結母乳栄養があります。適切な予防法については、産科、小児科の医師に相談しましょう。

授乳の注意点
性交渉の注意点

感染予防のために、コンドームの使用が勧められます。出産を希望する場合は、パートナーや医師とよく相談しましょう。

性交渉の注意点

HTLV-1は感染力が非常に弱く、生きた感染細胞が体内に入らなければ感染しないと考えられています。そのため、上記に気をつけていれば、一般的な社会生活における接触では、感染する可能性は低いといわれています。

先生からのメッセージ

家族もウイルス検査を受けるべきでしょうか?

HTLV-1の主な感染経路は母子感染や性交渉による感染なので、兄弟姉妹やパートナーなど、ご家族も感染している可能性はあります。しかし、HTLV-1感染者がATLLを発症する確率は低く、今のところ発症の予防法はないため、症状が出る前に検査を受けるメリットは明らかではありません。ご家族が検査を受けるかどうかは、その方への十分な情報提供なども含め、医師とよく相談して決めるようにしましょう。

公益財団法人慈愛会
今村総合病院
名誉院長/臨床研究センター長
宇都宮 與先生

宇都宮 與先生

感染者の多くはATLLを発症しないと考えられています

HTLV-1に感染しても、必ずATLLを発症するわけではありません。
HTLV-1に感染した人(キャリアといいます)がATLLを発症する確率は生涯で約5%(年間で1,000人に0.6〜0.7人)で1)、多くの人はATLLを発症しないと考えられています。

1)日本血液学会:造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版. 金原出版, 2013

もっと知りたい方へ〜HTLV-1キャリアはどのくらい?〜

日本では、HTLV-1キャリアは2007年時点で約108万人と推定されています。とくに九州や沖縄地方に多いことが知られていますが、近年では関東などの大都市圏でも増えてきています。

地域別キャリア数の推移(0〜99歳)

厚生労働省研究班(研究代表者 山口一成). 本邦における HTLV-1 感染及び関連疾患の実態調査と総合対策 平成21年度総括研究報告書, 2010.

ウイルス感染からATLL発症までは長い年月がかかります

血液中のT細胞にHTLV-1が感染すると、感染した細胞は増殖しながらさまざまな遺伝子の変化を積み重ねます。そして、いくつかの特定の遺伝子の変化が重なると、がん細胞(ATLL細胞)になると考えられています。

がん化したT細胞は、本来のT細胞の機能を果たさなくなり、異常に増殖します。また、がん細胞が増えることにより、正常なT細胞が少なくなります。

HTLV-1は潜伏期間が長く、感染からATLL発症までは、通常、数十年(40〜60年)かかるといわれています。このため、多くの方は高齢になってから発症します。

もっと知りたい方へ〜ATLL患者さんの年齢は?〜

国内の調査では、ATLL患者さんの半数は67歳以上で、40歳以下の患者さんはまれでした。今後、HTLV-1キャリアの高齢化に伴い、ATLL患者さんの年齢もさらに高齢化すると予想されています。

日本におけるATLL患者さんの年齢分布

厚生労働省研究班(研究代表者 山口一成). 本邦における HTLV-1 感染及び関連疾患の実態調査と総合対策 平成21年度総括研究報告書, 2010.

がん細胞はさまざまな臓器に広がることがあります

がん細胞(ATLL細胞)は、主にリンパ節や皮膚、血液中で増殖します。また、そこから広がって、肝臓、脾臓、脳・脊髄せきずい(中枢神経)、肺、消化管、骨など、全身のさまざまな臓器に入り込むことがあります(浸潤しんじゅんといいます)。

リンパ節の腫れや皮膚症状、合併症などがみられます

ATLLでは、がん細胞が増えている場所によって、さまざまな症状がみられます。

ATLLの主な症状

リンパ節の腫れ

がん細胞がリンパ節の中で増えている場合にみられます。首や足のつけ根、わきの下などが腫れます。

皮膚の症状

がん細胞が皮膚で増えている場合にみられます。赤い発疹や皮膚のしこりなどがみられます。

発熱、全身のだるさ

原因不明の発熱やだるさが生じる場合があります。

肝臓、脾臓の腫れ(肝腫大、脾腫大)

がん細胞が肝臓や脾臓で増えている場合、お腹や背中に圧迫感や痛みを感じることがあります。触診で肝臓/脾臓の腫れがわかる場合もあります。

また、ATLLが原因で起こる合併症がっぺいしょうの症状があらわれます。

ATLLが原因で起こる合併症

感染症

正常なT細胞のはたらきが低下すると、感染症にかかりやすくなります。

高カルシウム血症

血液中のカルシウム濃度が上昇し、高カルシウム血症になると、口が乾く、吐き気、便秘、全身のだるさ、意識障害(ぼんやりする)といった症状が起こります。

ATLLでは正常なT細胞のはたらきが低下しているため、通常は感染症の原因とならないような細菌・ウイルスでも感染症が引き起こされる場合があります(日和見感染症ひよりみかんせんしょうといいます)。

また、がん細胞が血液中のカルシウム濃度を上昇させる物質を放出するため、高カルシウム血症を合併することもあります。

合併症の徴候がみられた場合は、ATLLそのものの治療に加えて、合併症の治療を行います。

もっと知りたい方へ〜HTLV-1が原因の疾患はほかにもある?〜

HTLV-1感染が原因で生じる疾患には、ATLLのほかにも、HTLV-1関連脊髄症(HAMハム)という神経疾患、HTLV-1ぶどう膜炎(HUエイチユー)/HTLV-1関連ぶどう膜炎(HAUエイチエーユー)という眼疾患があります。HTLV-1キャリアがこれらの疾患を発症する確率は、ATLLよりもさらに低いといわれています。
HAMでは足が突っ張って歩きづらくなったり、排尿障害、便秘などがみられます。HU/HAUでは、目がかすんで霧がかかったように見えたり、視野に虫やゴミが飛んでいるように見えたり(飛蚊症ひぶんしょうといいます)します。
これらの症状が生じた場合は、医師に伝えましょう。

HTLV-1ウイルスに関するウェブサイトはこちらをご覧ください。

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ご家族のかたへ

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監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院
名誉院長/臨床研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生

大切な人がリンパ腫と診断されたら、ご本人だけでなく、ご家族のかたにも大きな影響を与えます。悲しみや不安を抱えるなか、さまざまな決断をしたり、初めて経験する多くの変化に対処していかなければなりません。今後の療養生活や、ご本人を支えていくうえで重要なポイントを知っておきましょう。