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検査・診断・治療PTCLの治療

監修:
島根大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科 准教授
鈴木 律朗(すずき りつろう)先生

PTCLでは多剤併用化学療法や放射線療法を行います

PTCLは月単位で病気が進行するといわれており、早期に治療を開始することが大切です。PTCLの治療方針はその種類によって異なり、大きくALK陽性ALCLとその他のタイプに分けられます。

ALK陽性ALCLの場合

ALK陽性ALCLでは、特定の抗がん剤治療(化学療法)で治療成績が良いという研究結果があり、それが標準治療とされています。病気の広がりが限定的な場合(限局期げんきょくきといいます)は、さらに徹底してがん細胞を減らすために、化学療法の後に放射線療法を行います。

その他のタイプの場合

PTCL-NOSやAITL、ALK陰性ALCLの場合も、ALK陽性ALCLと同様の化学療法が行われることが多いのですが、治療効果は必ずしも良好ではなく、標準治療が定まっていないのが現状です。そのため、臨床試験りんしょうしけんへの参加も選択肢のひとつとされています。抗がん剤治療で治療効果が得られた場合は、さらに徹底してがん細胞を減らすために自家造血幹細胞移植じかぞうけつかんさいぼういしょくを行う場合もあります。

最初の治療で効果が得られない患者さん(難治例なんちれいまたは治療抵抗例ちりょうていこうれいといいます)や、いったん効果が得られたものの、再びがん細胞が増えてしまう患者さん(再発または再燃さいねんといいます)には、これまで救援化学療法が行われていましたが、近年は新しい治療薬も使えるようになっています。

①PTCLでよく行われる多剤併用化学療法

多剤併用化学療法たざいへいようかがくりょうほうでは、いくつかの抗がん剤を組み合わせることで効果を高めたり、副作用を軽くしたりします。どの組み合わせで、どのように投与するとより良い効果が期待できるか、多くの研究が行われています。

日本血液学会のガイドラインには、ALK陽性ALCLの標準治療となる抗がん剤の組み合わせが示されています。アルキル化剤ステロイド薬など、4種類の抗がん剤を組み合わせたCHOPチョップ療法とよばれる薬物療法で、多くの場合は外来(通院)で行います。その他のタイプのPTCLでも、CHOP療法やそれに類似した多剤併用化学療法がよく行われます。

CHOP療法は、5日目まで抗がん剤を投与し、その後は体力の回復を待って休薬きゅうやく期間をとるというように、決められたスケジュールで行われます。このスケジュールを1コース(1サイクル)として6〜8回くり返し、約5〜6ヵ月かけて治療を行います。

高齢の患者さんや、もともと健康状態がよくない患者さんで、副作用が出やすく治療に耐えられないと考えられる場合は、薬の量を減らしたり、副作用が少ない薬を使用したりします。

主な副作用

CHOP療法では、下図のような副作用があらわれます。

「鈴木律朗・岡田隆宏・鈴宮淳司:初発濾胞性リンパ腫/富田直人:末梢性T細胞リンパ腫, 白血病・リンパ腫薬物療法ハンドブック(松村 到 編), p.197/p.251, 2016, 南江堂」より作成

化学療法はがん細胞を減らすために実施しますが、正常な血液細胞も一時的に減少します。このような副作用を骨髄抑制こつずいよくせいといいます。骨髄抑制が生じると、白血球の減少で感染症にかかりやすくなったり、血小板の減少で出血しやすくなります。骨髄抑制のほか、しびれなどの神経障害が生じる場合もあります。

副作用が発現するかどうか、またその強さやあらわれる時期は、患者さんによって異なります。化学療法を行う際には、副作用に対する予防や治療を並行して行います。

②放射線療法

放射線療法は、体の外からがんがある部位に放射線をあて、DNAを傷つけることによりがん細胞を破壊する治療法です。がん細胞の広がりが1ヵ所から数ヵ所に限定されている場合に効果的です。

放射線をあてると正常な細胞もダメージを受けますが、がん細胞のほうがダメージを受けやすいため、がん細胞が破壊され正常な細胞が回復できるくらいの量の放射線を照射します。

放射線照射の頻度や回数は病気の状態によって異なりますが、外来で治療可能で、6週間程度通院します。副作用としては、疲労感や皮膚の症状などがあらわれる場合があります。

③自家造血幹細胞移植

PTCL-NOSやAITL、ALK陰性ALCLで初回の多剤併用化学療法の治療効果がみられた場合は、さらに徹底してがん細胞を減らすために、自家造血幹細胞移植を行う場合があります。ただし、移植が有効かどうかはまだ研究が十分ではないと考えられているため、実施する場合は臨床試験として行うことが望ましいとされています。また、身体への負担が大きい治療法なので、患者さんの全身状態などを考慮して、移植を行うかどうかを決めます。ALK陽性ALCLでは、一般的に化学療法で効果がみられた後の移植は行われません。

移植の流れ

造血幹細胞とは、血液細胞のもとになる細胞です。自家造血幹細胞移植では、まず患者さん自身の造血幹細胞を採取して保存しておきます。その後、大量の抗がん剤や放射線治療によってがん細胞を破壊し(前処置ぜんしょちといいます)、保存しておいた造血幹細胞を移植して、血液細胞を作れるようにします。移植した造血幹細胞が患者さんの骨髄の中で血液細胞を作り始めることを、生着せいちゃくといいます。

チーム医療のための血液がんの標準的化学療法(直江 知樹, 堀部 敬三 編), メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2013 を参考に作成

移植に伴う合併症

自家造血幹細胞移植では、前処置によって吐き気や脱毛などの副作用が生じる場合があります。また、骨髄抑制により白血球が減少し、感染症にかかりやすくなり、さらには重症化する可能性があります。このため、しっかりとした感染予防が必要で、患者さんは移植から生着まで無菌室で過ごします。

④治療後の経過観察

治療効果が得られた場合も、再発する可能性は否定できないため、定期的な経過観察が必要です。

定期的な通院

経過観察のため定期的に通院し、リンパ節が腫れていないか、血液細胞の数に異常がみられたり、病気の進行度をあらわす検査値に異常がないか、治療後の副作用の状況はどうかなどを調べます。CTなどの画像検査を行うこともあります。

通院の間隔は決まっていませんが、病気の状態や患者さんの生活などから総合的に判断します。例えば、最初の1年は3ヵ月ごと、次の2年は6ヵ月ごと、その後は1 年ごと、といったスケジュールで経過観察します。

注意すべき症状

経過観察中に以下のような症状に気づいたら、受診するようにしましょう。

  • リンパ節の腫れ(首、わきの下、足のつけ根など)
  • リンパ節・皮膚の下のしこり
  • お腹や背中の圧迫感
  • 原因不明の発熱、だるさがつづく
  • 吐き気、食欲不振
  • 原因不明の頭痛や意識がぼんやりする
  • 口が渇く、頻尿がつづく

⑤初回治療がうまくいかない場合でも
さまざまな選択肢があります

PTCLでは、最初の治療で効果が得られなかった場合や、いったん効果が得られたものの再発した場合、決められた治療法はありません。しかし、化学療法のほか、近年では複数の新しい治療薬が使えるようになり、治療の選択肢が増えています。

新しい治療薬には、がん細胞がもつタンパク質に対する抗体薬や、がん細胞の遺伝子の制御にかかわるタンパク質のはたらきを妨げる薬などがあります。これらの新しい薬はそれぞれ特徴があり、2回目以降の治療は、それぞれの患者さんの病気の状態やこれまでの治療を考慮して決めていきます。

PTCLに関するウェブサイトはこちらをご覧ください。

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ご家族のかたへ

ご家族のかたへ

監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院
名誉院長/臨床研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生

大切な人がリンパ腫と診断されたら、ご本人だけでなく、ご家族のかたにも大きな影響を与えます。悲しみや不安を抱えるなか、さまざまな決断をしたり、初めて経験する多くの変化に対処していかなければなりません。今後の療養生活や、ご本人を支えていくうえで重要なポイントを知っておきましょう。