1. りんぱしゅ通信 ホーム
  2. 検査・診断・治療:【疾患編】アグレッシブATLLの治療

検査・診断・治療アグレッシブATLLの治療

監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院 名誉院長/臨床研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生

アグレッシブATLLでは化学療法や造血幹細胞移植を行います

アグレッシブATLLでは、がん化したT細胞を減らすことを目的として、早急に治療を開始します。

抗がん剤治療(化学療法)を行い、治療の効果が得られた場合は、さらに徹底してがん細胞を減らすために同種造血幹細胞移植どうしゅぞうけつかんさいぼういしょくを実施します。

最初の化学療法で治療効果が得られない患者さん(難治例なんちれいまたは治療抵抗例ちりょうていこうれいといいます)や、いったん効果がみられたものの、再びがん細胞が増えてしまう患者さん(再発または再燃さいねんといいます)には、救援療法が行われます。

①ATLLでよく行われる多剤併用化学療法たざいへいようかがくりょうほう

標準的な多剤併用化学療法

多剤併用化学療法では、いくつかの抗がん剤を組み合わせることで効果を高めたり、副作用を軽くしたりします。どの組み合わせで、どのように投与するとより良い効果が期待できるか、多くの研究が行われました。

日本血液学会のガイドラインでは、ATLLの標準治療となる抗がん剤の組み合わせが示されています。アルキル化剤やステロイドなど、8種類の抗がん剤を組み合わせたmLSG15療法とよばれる薬物療法で、入院または外来で行います。

mLSG15療法は、4週間かけて8種類の抗がん剤を順番に投与し、その間には体力の回復を待って休薬きゅうやく期間をとるというように、決められたスケジュールで行われます。このスケジュールを1コース(1サイクル)として6回くり返し、約半年をかけて治療を行います。

高齢の患者さんや、もともと健康状態がよくない患者さんで、副作用が出やすく治療に耐えられないと考えられる場合は、薬の量を減らしたり、副作用が少ない薬を使用したりします。

主な副作用

mLSG15療法では、下図のような副作用があらわれます。

「崔 日承・鵜池直邦:成人T細胞白血病・リンパ腫, 白血病・リンパ腫薬物療法ハンドブック(松村 到 編), p.263, 2016, 南江堂」より許諾を得て抜粋改変し転載.

化学療法はがん細胞を減らすために実施しますが、正常な血液細胞も一時的に減少します。このような副作用を骨髄抑制こつずいよくせいといいます。骨髄抑制が生じると、白血球の減少で感染症にかかりやすくなったり、血小板の減少で出血しやすくなります。

副作用が発現するかどうか、またその強さやあらわれる時期は、患者さんによって異なります。化学療法を行う際には、副作用に対する予防や治療を並行して行います。

分子標的薬

近年、がん細胞がもつタンパク質に対する抗体薬(分子標的薬ぶんしひょうてきやく)が開発され、化学療法と併用もできるようになりました。この薬を投与する前には、標的となるタンパク質を患者さんがもっているかどうか検査する必要があります。

②同種造血幹細胞移植

多剤併用化学療法の後に同種造血幹細胞移植を行うと、患者さんの経過が良いという研究結果があります。また、治癒の可能性が期待できることから、多剤併用化学療法で効果が得られた患者さんでは、移植を検討することが勧められています。ただし、身体への負担も大きいので、患者さんの全身状態などを考慮して、移植を行うかどうかを決めます。

造血幹細胞移植には、他の人の造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植のほか、患者さん自身の造血幹細胞を前もって採取しておき移植する自家造血幹細胞移植じかぞうけつかんさいぼういしょくがありますが、ATLLでは、自家造血幹細胞移植は再発する確率が高いため、推奨されていません。

移植の流れ

造血幹細胞とは、血液細胞のもとになる細胞です。同種造血幹細胞移植では、まず大量の抗がん剤や放射線治療によってがん細胞を破壊し(前処置ぜんしょち)、その後、ドナーから提供される正常な造血幹細胞を移植します。移植した造血幹細胞が患者さんの骨髄の中で血液細胞を作り始めることを、生着せいちゃくといいます。

チーム医療のための血液がんの標準的化学療法(直江 知樹, 堀部 敬三 編), メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2013を参考に作成

移植された造血幹細胞が生着し、新しく血液細胞が増えてくると、ドナー由来の白血球は、患者さんの臓器を異物としてみなして攻撃してしまうこともあります。このような合併症は移植片対宿主病いしょくへんたいしゅくしゅびょうGVHDジーブイエイチディー)といい、免疫抑制剤などにより対処を行います。GVHDには、急性GVHDと慢性GVHDがあります。

一方、ドナー由来の白血球が残っていたがん細胞を異物としてみなして攻撃し、がん細胞をさらに減少させてくれる場合があります。このような効果は、移植片対ATLL効果といいます。

移植に伴う合併症

同種造血幹細胞移植では、上記のGVHDのほか、前処置による吐き気や脱毛、臓器障害などの副作用が生じる場合があります。また、骨髄抑制により白血球が減少し、感染症に非常にかかりやすく、重症化する可能性があります。このため、しっかりとした感染予防が必要で、患者さんは移植から生着まで無菌室で過ごします。

フル移植とミニ移植

高齢の患者さんなど、前処置で負担の大きい強力な治療を行うことが難しい患者さんでは、前処置の強度を弱めた骨髄非破壊的移植こつずいひはかいてきいしょく(ミニ移植)が行われることがあります。ミニ移植に対し、従来の移植法はフル移植(骨髄破壊的移植)といいます。フル移植を行う目安は55歳までとされています。

ドナーの条件

同種造血幹細胞移植のドナーは、HLAエイチエルエーという白血球の型が患者さんと一致している必要があります。HLAは兄弟姉妹間では1/4の確率で一致しますが、非血縁者間では一致する確率が低く、骨髄バンクで非血縁者のドナーを探す場合、見つかるまで時間がかかるケースも多くみられます。HLAが100%一致することが理想的ですが、完全に一致していない場合でも移植を行う場合があります。

③治療効果が得られない/再発したときの治療

最初の治療で効果が得られなかった場合や、いったん効果がみられたものの再発した場合に行う治療を、救援療法といいます。救援療法にはさまざまな治療法があり、標準治療は決まっていません。個々の患者さんの状態や前回の治療などを考慮して、治療を行います。

近年は、分子標的薬や免疫調節薬めんえきちょうせつやくといった新しいタイプの薬も使えるようになっています。免疫調節薬は、さまざまなメカニズムでがん細胞の増殖を抑えると考えられています。

④治療後の経過観察

治療効果が得られた場合も、再発する可能性は否定できないため、定期的な経過観察が必要です。経過観察時に注意すべき症状などについては、インドレントATLLの治療を参照してください。

先生からのメッセージ

完全奏効かんぜんそうこうって何ですか?

完全奏効とは、治療の効果をあらわす言葉で、検査などでがん細胞が見つからない状態です。完全奏効というと「治った」と思われがちですが、そうではありません。検査では見つからなかったものの、まだ少量のがん細胞が残っており、再発する可能性が否定できないのです。一方、検査でがん細胞がみられても治療前に比べて減少している場合は、部分奏効ぶぶんそうこうといいます。寛解という言葉も奏効と同様に使われます。

アグレッシブATLLでは、治療効果を都度、確認しながら、その患者さんに最適な治療を検討していきます。治療効果の判定は、リンパ節や皮膚、その他の臓器に病変がないか、骨髄への浸潤がないか、血液中に異常なリンパ球がないかなどを調べ、基準にあてはめて行います。

ATLLは奏効や寛解になっても経過観察や治療を続ける必要があります。しかし、治療法はさまざまな角度から研究が重ねられ、進歩しています。納得のいく治療ができるよう、医師とよく相談しながら、取り組んでいきましょう。

公益財団法人慈愛会
今村総合病院
名誉院長/臨床研究センター長
宇都宮 與先生

宇都宮 與先生

HTLV-1ウイルスに関するウェブサイトはこちらをご覧ください。

高額療養費制度を知っていますか? 高額療養費制度に関するQ&A 詳しく読む 高額療養費制度に関する「よくあるご質問」をQ&A形式で分かりやすく解説しています。

ご家族のかたへ

ご家族のかたへ

監修:
公益財団法人慈愛会 今村総合病院
名誉院長/臨床研究センター長
宇都宮 與(うつのみや あたえ)先生

大切な人がリンパ腫と診断されたら、ご本人だけでなく、ご家族のかたにも大きな影響を与えます。悲しみや不安を抱えるなか、さまざまな決断をしたり、初めて経験する多くの変化に対処していかなければなりません。今後の療養生活や、ご本人を支えていくうえで重要なポイントを知っておきましょう。